久遠の花〜 the story of blood~【恋】
どうして先生が? と考えていると、中に入るよう促された。ソファーに座ると、先生はいつものように、やわらかい口調で話を始めた。
「病院ではいつもお目にかかっていますが、こういうのは初めてですね」
「は、はい。まさか、そのう……先生まで」
「〝吸血鬼なのか〟ですか?」
私の心を見透かすように、先生は聞く。
「説明するには少し難しいですが……彼らと私とでは、根本が違うのですよ。もちろん私は、血など吸いませんので、安心して下さい」
それを聞いて、ほっとする自分がいた。先生まで血を吸うなんて言われたら、周りにいる人全部、妖しく思えてしまいそう。
「ところで……キョーヤはどうしたのですか? 私は三人でと言ったはずですが」
「向こうから呼び出しがあったみたいですよ」
「……そうですか。では、急ぎましょう」
そう言って、先生は奥の部屋に行ってしまった。
二人きりになった私は、小声で雅さんに訊ねる。
「あのう……。これから一体、なにをするの?」
「美咲ちゃんが、どの部類の命華か調べるんだよ」
「そんなにたくさんあるの?」
「いや。だいたいは二種類かな? 花を作るのが得意なのと、治療を得意とするがね。――ま、例外もあるみたいだけど」
そう言ったきり、雅さんは黙ってしまう。
なんだか聞いてはいけないような雰囲気がして、私はそれ以上何も聞かないまま、先生が戻ってくるのを待った。
「―――準備が整いましたよ」
呼ばれた私たちは、先生と一緒に奥の部屋へ入った。
「日向さん、これを」
そう言って先生は、私に透明な石が付いたシルバーの指輪を差し出した。
「これを、付けるんですか?」
「えぇ。それを、左の小指に付けて下さい」
言われるがまま、私は指輪をはめた。透明で淡い光を放つ石に、つい見惚れてしまいそうになる。