海の色
いち
―遥かな時の、

話である―




海辺で赤子が泣いている。風は赤子の姿を見つけると、赤子の声と匂いを身にまとって、海辺に住む村人たちのもとに届けた。

貧しくとも、善良な村人たちは、海辺で波にさらされて泣いている赤子を拾いあげると、それが、どこの者だかはわからないにしても、皆で育てる事を決意した。

彼らは、赤子に名前を付けた。
「ドーター」と。
誰の娘でもない、皆の娘であるという意味を込めて、ただの娘と名付けたのだった。

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