海の色
ニーは、砂浜まで泳ぎ寄って行った。

そうして、波打ち際で体を腹這いに横たえたまま、ドーターの方を見つめている。

その瞳は、キラキラと好奇の色に黒く輝き、
ドーターに対して微塵の恐怖も感じてはいないようだった。

「ねえ……」

ドーターは話しかけようとして戸惑ってしまった。
言葉は通じるのかしら?

「キッキッ」

ニーは、ドーターのためらう様子も可笑しいらしく、さかんに笑い声を発しては、何か水面に顔を伏せてプクプクと泡をたててあそんでいる。

それは、ニーにとっては、言葉なのだが、人魚語のわからないドーターには、どう見ても、ふざけて遊んでいるようにしか、見えないのだ。


「どうやら、お互い言葉が通じないようね」


ドーターはそう呟くと、しばらく砂浜に座り込んで考え出した。


何か良い方法はないかしら。
私の考えている気持ちだけでも伝えたいのに。


ニーは、黙り込んでいるドーターを見つめていたが、

しばらくすると飽きてしまったらしく、沖の方へ帰ろうと体の向きを変えはじめている。

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