…TRIANGLE…
「私ね、仕事辞めようと思ってるんだ…………」
「えっ?」
彩さんのいきなりの告白に、俺の欲望はますます行き場がなくなりどん詰まりだ。
「今は、製薬関係の仕事してるんだけどいまいちやりがいが感じられなくてさ。ヘルパーの資格は、とりたいなぁと思ってるんだけど。悩んでる時に隼斗が都合よく入院してくれたから、仕事さぼっちゃった」
「さぼっちゃったて言われても……ええっ? さぼっちゃって大丈夫ですか? 俺のせいにしないでくださいよ」
彩さんの細くて冷たい手が俺の手の上に添えられた。
彩さんは冷え症だから足のつま先も、いつも冷たい。
「隼斗のせい……それかさ、もう面倒くさいから田舎帰ってお見合い結婚でもして子供でも作っちゃおうかなっとも考えてる」
「お、お見合い!? それはダメです。せめて俺が大学卒業するまで我慢してください!」
彩さんは笑いながら、随分先だね、と現実味帯びたことを言う。果てしなく遠い未来に感じた。
彼女の肩に手を伸ばそうすると、腰に電気が流れたような痛みが走り、足がじんじんと痺れる。あんなタックルで吹っ飛ばされたくらい、なんてことないはずなのに……