としサバ
32話 秘め事
 沙穂は父親の秘め事を目撃したその日の内に、母親の果穂の所に向かった。

 定年の日に、何人もの女子社員が、父親の為に泣いた、と言う事を、父親から聞いた時、沙穂は女の勘で、お父さんは女に気を付けなければならないと考えていた。

 しかし、女の勘が、こんなに早く当たるとは、沙穂は夢にも考えてはいなかった。

 「お母さん、私よ」
 「沙穂、どうしたの」

 「お父さんが大変なのよ」

 そう言いながら、沙穂は台所のそばにある食卓テーブルに座った。

 お茶を沙穂に注ぎながら果穂が言った。


 「お父さんがどうしたの」



 「女がいるのよ」



 「えっ!!」


 果穂の顔色が変わった。それでも、果穂は自分を出来るだけ落ちつかせようとしている。それが、母親の表情から、娘の沙穂にも良くわかった。





 
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