としサバ
 果穂が呼吸を整えた。

 「何かの間違いではないの」

 「いいえ、間違いなんかじゃないわ。私、この目ではっきりと見たから」

 「信じられないわ」

 「信じられないと思うけど本当よ。私、お父さんを見損なったわ」

 「どうしてわかったの」

 「私、お父さんが大変だと思うから、料理を作って持って行って上げようと思ったわけ。それが、何度、電話をしてもいないのよ。その後、午前1時ごろと、朝早くと、2度電話したのだけど、やっぱり留守よ。それで、可笑しいなと思ったの」

 「・・・」


 「気になって、今日の午前中にお父さんのマンションに行ったら、びっくりよ」


 「何があったの」


 果穂が体を乗り出して、次の沙穂の言葉を待っている。



 
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