としサバ
  「私にもさっぱりわからないわ。どうしてなの、お父さん」
 
 果穂がさっぱりとわからない、という顔をした。


 「お前たちには理解できないかもわからないけど・・・」


 信彦は60歳を過ぎてからの就職探しの難しさと、今の心境を、かいつまんで三人に話した。

 管理員への就職も容易でないこと。

 家族を守る為にひたすら我慢を続けて来たこと。

 子供たちも立派に独立したこと。
 
 この世に生を受けて良かった。
 この事を残りの人生で実感したかったこと。

 たとえ、我がままだと言われようと。


 信彦は自分の気持ちを3人に率直に説明をした。


 「果穂と離婚をしようと考えたのは、株で失敗をしても迷惑をかけたくなかったいからだ」
 
 信彦が果穂と離婚したい動機を語った。


 「僕にはお父さんの気持ちが良くわかるよ。何か、将来の自分の姿を見ているみたいで、複雑だったけど」

 勝彦が信彦の考えに理解を示した。

 「私だって同じよ」

 
 沙穂も相槌を打った。




 
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