強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「き…昨日は…あの、その」

いつもそう。
柳瀬相手だとどうしても言葉がどもってしまうし、言いたいことがうまく伝えられない。

それを悟ったかのように柳瀬が口を開く。


「“昨日は――自宅まで送って貰って何もなかったですか?”」
「―――え?」


5階に到着し、扉が開いた。


「何もしてないよ」
「あ、で、ですよね…まさか私なんかに。すみません。」


そう笑って百合香はエレベーターから降りようとしたときに柳瀬の右腕で目の前を阻まれる。


「あ、あの」


そうしてる間に扉は閉まり、エレベーターは止まったまま。


「昨日はね。」
「昨日は…って…」
「寝ている隙に―――っていうのは面白くないだろう?」


腕の向こう側に見える胸の万年筆が光ってる。
その上にある端正な顔立ちの柳瀬の表情は、初めて見る男の人だ――。


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