強引な次期社長の熱烈プロポーズ

2.幸せと恐怖感



「ごちそうさまでした」

そう言いながらレストランを後にしてエレベーターの前に立つ。

さっき会計をしているときに忙しい中柳瀬の伯父である料理長が顔を出して軽く挨拶を交わした。
伯父だけど、長身で綺麗な黒髪に優しく笑った目元が柳瀬に似ていて不覚にも百合香はドキッとしてしまった。

エレベーターの扉が開いて乗り込むのはまた丁度2人だけ。

「こんなホテルだときっと部屋も豪華なんでしょうねぇ」

自分には一生関係ないと思っていたところだけに色々と感じることがあってそれを思わず口にした。

「…それは、誘ってるの?」

柳瀬が振り向いて百合香に近づく。

「えっ?そういうつもりじゃ…」
「神野さんがそうでも、男はそう思わないよ」

ここは密室。それもエレベーター。逃げる場所なんかない。それはここ数日で散々わかっていた筈なのに。

百合香は柳瀬に詰め寄られて背に壁を感じる。
そして顔を上げ輝くエレベーターの照明を視界の端に捉えながらゆっくりと目を閉じる。


引き上げられるように腰に手を回される感じが、好き。


いつ、どこで止まって人がくるかわからないのに、柳瀬のキスは終わらない。


「ん…っ」


ポーン

ようやく止まった階は車を止めている地下2階。

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