強引な次期社長の熱烈プロポーズ


「とりあえず」

そう言って江川はすぐ近くの珈琲店に誘ってくれた。
あの様子だと、コーヒー一杯飲んだって時間的には全然問題ないだろう。
そう判断した百合香は大人しく江川についてきてコーヒーを頼んだ。


「まさか、喧嘩でもした?」


穏やかに話をする江川はこんなとき、とてもほっとする。

「いえ、そういうことはないです」
「今日は約束してなかったの?」
「····」

百合香はその質問に黙り込み、それを見て江川は水を口に運んだ。
カラン、と氷がグラスに当たる音が響くとそのグラスを元に戻して江川は優しく話し始めた。


「オレのこと、信用できない?」
「えっ」
「こう見えて口は堅いし、親友の彼女が相手なら尚更力になりたいと思ってるんだけどね」


(そんな風に思ってくれてたなんて。)

信用してなかったわけじゃなかったけど、そう思われてしまうような態度をとってしまったことに後悔と申し訳なさでいっぱいになった。


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