強引な次期社長の熱烈プロポーズ
ガチャッ

柳瀬はやっと自宅に着いて、部屋に上がり、上着を脱いでソファに腰を掛けた。ネクタイを緩めてテーブルに置いた携帯を見た。

百合香からは返信はない。

(多分疲れて寝てしまっているのだろう。彼女は一度寝たら起きないタイプだ。)

そんなことを思いだしながら柳瀬はふっと自然に笑みがこぼれた。

もうすぐ日付が変わってしまう。明日の準備をしなければ。そう思ってソファから腰を上げた瞬間だった。


RRRR RRRR


鳴る筈のない電話が音を上げた。
柳瀬は急いで携帯を手に取りディスプレイを確認すると、【神野百合香】と名前が出ていた。

ピッ

「もしもし?」
『もっ、もしもし…』

少し上ずった彼女の声。
きっと電話をしていいかどうか悩んだ末の勇気を出した決断だったのだろう。
電話越しの百合香を想像するだけでまた笑みがこぼれる。

本当にどこまで俺を夢中にさせれば気が済むんだろう。


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