強引な次期社長の熱烈プロポーズ

6.彼の過去に捕らわれて



再び車に乗り込むと、夜の街を抜け出して少しだけ遠回りする。

流れる景色の中で、車内だけはゆっくりと穏やかな空気に包まれていた。


(ああ。今月の定休日ももう終わっちゃうな。
他に今月一緒の休みはあったかな。)


そんなことを呑気に考えていると柳瀬が口を開いた。


「出張前に話をしたけど···」
「はい?」
「俺のとこにおいで」
「···!!」


ドクン!と心臓が急に煩く騒ぎはじめて、百合香は控え目に光る左手で胸を抑えた。


(嬉しいし、少しでも傍に居たい。
智さんさえ同じ気持ちなら、私は―――)


「····嫌?」
「···嫌じゃないです」
「じゃあどうしてそんな顔をしてるの」


信号が赤になってギアがlowに入れられる。
柳瀬は百合香を真っ直ぐに見て逃がしてはくれない。

そう―――百合香はその瞳からは逃れられない。前も、今も、これからも。


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