強引な次期社長の熱烈プロポーズ
幸い後続車がいなかったからクラクションを鳴らされる心配はなかった。


あの柳瀬がそのくらい止まっていた。


だけどすぐに前を向きなおして車は発進した。
すごくゆっくりと。
そして柳瀬はこう言った。


「···家に帰って話しよう」


その含みのある言い方が、百合香にさっき言った言葉を後悔させた。
でも時間を戻すことは出来ない。

百合香は後はもう時間が経つのを待つしか出来なくて、静かに息をするだけだった。
左手の薬指にはめられたそれが、今や自分の胸を締め付ける存在になっていて、重量感を増していた。


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