契約の婚約者
揚げ足を取られるような片桐の切り返しに反論することができない。


俺が好きか、と聞かれればすぐに否定できたのに、嫌いではないのか、と聞かれれば、どう答えて良いのかわからない。


「嫌いではないなら問題ないだろう。結婚後もお前の自由にしたらいい。一条の名前でいたいならそれもいいだろう。仕事も旅行も何でも自由にしたらいい。俺は一切干渉しない。あぁ、家事もしなくていいからハウスキーパーを雇ってもいいだろう。子供も欲しくなければそれでいい。親には俺がタネなしだとでも言っておけ。結婚してお前が負担と思うことは全て取り除いてやる」


----それって結婚する意味があるのか?


単なる同棲でもいいのでは?


合点のいかないことに、沙希の頭の中の疑問府は増え続ける一方だ。


一条コーポレーションが欲しいというわけでもなさそうだ。


片桐の家ですら継ぎたくないと言っていたくらいで、彼はそういう野心からは程遠い男に見えるが----


沙希の考えていることに気付いたのか、片桐が沙希を腕に抱き寄せ、言葉を続けた。




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