契約の婚約者
熱い吐息と共に強く囁かれた言葉に、どこか切なさが残る響きに、やっぱり胸がぎゅっとる。


首を横に振ろうと思った。


こんな横暴なヤツ睨んでやろうと思った。


でも、片桐を見上げたその瞳は潤み、いつも毒を吐く小さな口は擦れるような甘い喘ぎしか漏らさない。


自分でも気づかぬうちに、沙希は無意識に首を立てに振ってしまっていた。


片桐の口元が微かに緩んだ瞬間、しまった、と思ったが、頷いてしまった首を今更横に振っても既に遅い。


そして、片桐は自身の熱を放つべく更に沙希を突き上げ、激しさを増していく。


快感に息を凝らしている片桐を視界に捕らえた瞬間、沙希は意識を手放した。



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