契約の婚約者

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「行ったか……」


奈央の後ろ姿が見えなくなり、沙希がボソッと呟いた。


「どうした?寂しいのか?」


「寂しいって言ったら慰めてくれる、カタギリさん?」


珍しく沙希から腕に手をかけ甘えてみせる。片桐は一瞬目を見開くが、すぐに元の顔に戻った。


「慰めて欲しいわけじゃなさそうだな?何を考えている?」


「チッ……お見通しか。せっかく車で来たんだし、ドライブしていこうよ」


「おいおい、俺は半日しか有給取ってないぞ?」


「私は一日有給取ったもんね。たまにはいいじゃん、カタギリさん働きすぎだよ」


そう言って片桐のジャケットのポケットからマルセデスのキーを奪い取りスタスタと出国ロビーを歩いていく。



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