契約の婚約者
以前は、会社では殆ど話すことがなかったのに、最近はやけに沙希に話しかけてくる。


そして、その表情が妙に優しくて、背筋がむずむずする。


それは、沙希にとって非常に困ったことなのだ。


沙希は会社の男には手を出さない主義。


どこの部署の飲み会にも顔を出すが、一定の距離を保っている。


詮索されるのも、噂になるのも避けたい。


そこへ----あの片桐だ。


性別、年齢問わず、社員は皆怖がって近づかないが、あの容姿に仕事がデキるとあっては、遠巻きに憧れている女子社員も数知れず。


能率権化の片桐が、沙希にだけに微笑みかけ、仕事中に私用で話しかけるとなると、嫌でも噂が立つ。


そして沙希自信も立っているだけで目立つ存在なだけに必要以上に周囲の注目を惹いた。


カンベンして欲しい----


プライベートを詮索されたくない沙希にとっては、面倒くさいこと極まりない。



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