アジアン・プリンス
1時間後――ティナは誰の説得にも応じず、結局部屋に籠もっていた。


彼女は何とか部屋から抜け出す術を考える。


このドレスで皇太子の前に立てば、彼女の意思は伝わるだろう。仮に、無礼だと怒らせたとしても、尚更、王妃になどできないと思うはずである。


父は多分何も言わず、メイソン家の長女を高値で売り渡したに違いない。

ティナにそれだけの価値はない。むしろ、王家の恥だと知らせれば、皇太子は諦めざるをえないはずだ。


無論、そうはさせまいと、父の命令でドアの外には見張りが立っていた。メイドが違うドレスを抱えて部屋の前で待機しているらしい。


ティナはふとベッドを見た。上に散らかった新聞紙の残骸はキレイに片付けられている。


白いシーツを見つめるうちに、何事か閃き、彼女は勢いよくシーツを剥がした。


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