アジアン・プリンス
(24)背徳のビーチ
「お願いレイ、それ以上言わないで……お願い」

「ティナ……私には婚約者がいる。仮に、何らかの事情でミス・ミサキ・トオノとの結婚が無くなっても、私が妃に選ぶのは日本人だ。なぜなら、私の体には半分以上アメリカの血が流れている。だから」

「わかってる。わかってるわ。それでもあなたの役に立ちたいの。それでも……」


ティナの指がレイのチョコレート色の髪に触れた。


「1度触ってみたかったのよ。とても柔らかい髪ね」

「細くて柔らかくて縺れやすい。扱い辛い髪質のようだ。短くしたいんだが……刈上げのプリンスは見たくないと言われてね」


レイは切なげに微笑みながら、ティナの金髪に指を絡めた。

ごく自然にふたりの唇は触れ……軽く重ねるだけで、レイは滑るように頬から髪にキスを移した。


「綺麗だ。太陽の光を集めたような輝きだ」


レイは髪の上からティナの白い首筋に口づける。甘い吐息がティナの喉からこぼれ、首の付け根を震わせた。そしてそれはレイの唇にも伝わる。

レイは腰まで海に浸かり、水飛沫で全身びしょ濡れだ。レイに抱えられているとはいえ、ティナも大差ない格好だった。


「震えている……寒いなら戻って」

「いやっ!」


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