アジアン・プリンス
ティナは即座に答えた。

これほどレイを身近に感じたことはない。全身ずぶ濡れで、この先のことを考えたらとてつもなく不安だ。

それでも、1分1秒でも長くレイと抱き合っていたい。

ティナにはそれだけだった。


「ティナ……あまり身体を動かさないでくれ」

「ごめんなさい。重かったでしょう……私も水の中に」

「ああ、違う。そういう意味ではなくて。君にはどうも顕著な反応を示してしまう。――誓って言うが、私はこんな節操なしの男ではないんだ。説得力はないかもしれないが……」


髪から唇を離し、レイはティナを見つめて言った。

レイの頬は薄っすらと染まって見える。

セラドン宮殿のプールほど直接密着しているわけではないが、それでもはっきりとティナのヒップに当たっていた。ティナの熱い視線を受け、彼の情熱は一層その存在を彼女の身体に伝える。


「わかってるわ、レイ。これは全部私のせいね」

「そうだと言ってしまえたら楽だが……。多分、違うだろう」

「どうして? 私のせいにしてちょうだい。何もかも。私はあなたのためなら何でもするわ。神を裏切ってもいい。もし……ほんのわずかでも、あなたの愛を得られるなら」


< 105 / 293 >

この作品をシェア

pagetop