アジアン・プリンス
「あら? お召し替えなさったのですか? 長袖では暑うございましょう」

「い、いえ。大丈夫ですから。気にしないでください」


ティナは慌てて言う。

だがそのとき気づいたのだ。頼んだわけでもないのに、用意されたシャツは長袖だった。レイがバングルのことを気にしたのだろうか? それとも他の誰かが……。


だが、色々と思い悩むティナの耳に飛び込んできたのは、スザンナの信じられない台詞だった。


「このお時間でしたら、晩餐会のお仕度には充分間に合いますね。よろしゅうございました」


彼女はニコニコとしているが、ティナには初耳だ。


「ば、ばんさんかいって……晩餐会ですか? そんなっ! あの、私には関係ありませんよね?」

「何をおっしゃられます。皇太子殿下がアメリカから同行されたお客様……クリスティーナ様を皆様にご紹介するための晩餐と伺っております」


足元がふらつき、思わず床に座り込みそうになるティナだった。


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