アジアン・プリンス
「ご心配には及びません。さあ、どうぞ」


そう言うとスザンナは部屋の扉を押し開けた。例の『噴水の間』である。そこを通り抜け、奥の寝室に辿り着いたとき、ティナは目を見張った。

そこにあったのは、ティナの緑がかったヘーゼルの瞳に合わせた、エメラルドグリーンのイブニングドレス。

シルクオーガンジーを使った光沢のある素材が、ライトアップされ光り輝いている。オフショルダーで背中側を紐で縛るタイプだ。こんな大胆なデザインのドレスは初めてだった。

ドレスに合わせたエメラルドのイヤリングとネックレス。夜会靴も当然、ドレスと同じ布で作られており、シルクのストッキングとガーターベルトまであった。

そして……白い絹のショーツに、ティナは赤面する。


「殿下もここまでお気遣いなさらなくても……。ああ、いえ……そうですわ! 側近が悪いのです。逆に失礼にあたることを、誰もお教えしなかったなんて!」


スザンナは皇太子批判になると思ったのか、すぐさま矛先を側近に向ける。

だが、ティナにはすぐにわかった。これはレイの失態でも情熱でもなく、気遣いであり理性なのだ。

晩餐会と聞き、しり込みするであろうティナが、遠慮せずにドレスを着られるように、と。

だがその時、右手にはまったバングルを思い出し、ティナは青くなる。


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