アジアン・プリンス
「御意にございます」


サトウはまるで表情を変えず答える。

レイはサトウから視線を外し、国賓用に置かれた椅子の、赤いベルベットの背もたれを掴んだ。


「贈り物に、値札が付いていたようだが」

「気づきませんでした」

「口頭で伝えたわけではないのか?」

「大変、貴重なお品であることは申し上げました」

「バングルを外す必要がない、と言うことは?」

「……」

「どうなのだ? 伝えたのか?」

「……ミス・メイソンのご配慮かと思われます」

「私はブレスレットを渡すように伝えただけだ。バングルを取り上げて来いなどとは、言っていない」

「御意にございます」

「では、なぜティナはバングルを外した」

「ミス・メイソンのご配慮かと」

「わかった。もういい。下がれ」


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