アジアン・プリンス
(31)いくつもの火種
『わかった。いや、口は出さないほうがいい。こちらでも手配してみよう。引き続き、何かわかったら報告を頼む。ああ――ご苦労だった』
それは、日本のアズウォルド大使館員からの緊急連絡であった。
「殿下……」
サトウも殊勝な面持ちでレイを見ている。
「事件性はないらしい。あとは向こうに任せよう」
「しかし殿下。これは忌々しき事態ではないかと。事の次第を明らかにして……」
「この件はもうよい」
「殿下!」
「それより、聞きたいことがある」
レイは携帯を仕舞い、補佐官サトウと向き合った。
“騎士の間”より奥、王の住居の近い“人魚の間”に彼らはいた。
そこは、国王をはじめ王族との謁見に使われる部屋だ。白い天井と壁、柱に金箔で施された人魚の浮き彫りが名前の由来である。
「サトウ、君はティナになんと言ってエメラルドのブレスレットを渡したのだ」
「皇太子殿下よりの贈り物である、と申し上げました」
「それだけか?」
それは、日本のアズウォルド大使館員からの緊急連絡であった。
「殿下……」
サトウも殊勝な面持ちでレイを見ている。
「事件性はないらしい。あとは向こうに任せよう」
「しかし殿下。これは忌々しき事態ではないかと。事の次第を明らかにして……」
「この件はもうよい」
「殿下!」
「それより、聞きたいことがある」
レイは携帯を仕舞い、補佐官サトウと向き合った。
“騎士の間”より奥、王の住居の近い“人魚の間”に彼らはいた。
そこは、国王をはじめ王族との謁見に使われる部屋だ。白い天井と壁、柱に金箔で施された人魚の浮き彫りが名前の由来である。
「サトウ、君はティナになんと言ってエメラルドのブレスレットを渡したのだ」
「皇太子殿下よりの贈り物である、と申し上げました」
「それだけか?」