アジアン・プリンス
ティナの目の前に王子様が現われ、人生を180度方向転換してくれた。

このクルーザーの舵を取っている男性だが……。彼はいったい、ティナをどこに連れて行くつもりなのだろう。

だがレイと一緒なら、例え遭難しても構わない。それはティナの偽らざる思いだった。


だが、ティナの思いは叶わず、船は30分もせずひとつの島に到着する。

岸には灯りが見え、接岸場所を示しているようだった。レイが接岸を終え、ティナを連れて船から下りると、待っていたのはなんとアンナだ。


「ハイ、ティナ! アジュール島へようこそ!」

「ア、アジュール島……」


本島の隣にある島だ。

間近で見たアンナは、数日前のドレス姿とはまるで違っていた。

Tシャツとショートパンツ、その上に白衣を羽織っている。背中まである黒髪はカラフルなバンダナに包まれ、頭の後ろでお団子を作っていた。


「アンナ、すまないが夜が明ける前にコテージに入りたい。人目につきたくはないんだ」

「わかってるわ。そんなに焦らなくても大丈夫よ」


ティナは尋ねる間もなく、アンナが運転する車に乗せられた。

車は細い山道を抜け、1時間足らずで入り江に作られたこじんまりとしたコテージに到着したのだった。


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