アジアン・プリンス
煌々としたライトの下で見るレイは、やはり特別だ。寂れたコテージの中にいても、彼を取り巻く空気は凛然と澄み切っている。


ティナはレイから視線を外し、ざっと室内を見回した。

玄関を入ってすぐにリビングとダイニングがあり、カウンター式のキッチンもあった。キッチンの横に、奥に繋がる通路があり、レイが戻ってきたのもそこからだ。


「ガスも使えるの?」

「このコテージはオール電化なんだ」


古そうに見えて、設備は最新のものを入れてあるようだ。

だがレイの言葉通り、とても綺麗とは言えない。ティナがキッチンカウンターに指を置き正面を拭うと、指先は真っ白になった。相当埃が積もっている。


「まだ3時だ。シーツを替えればすぐに眠れるだろう。朝には人が来て、君が困らないようにしてくれる。数日の辛抱だ。いいね、ティナ」


ティナはその言葉にドキンとした。


(私が困らないように? じゃあレイは?)


レイは冷蔵庫を開け、中を覗き込んでいる。だが、電気の止まっていた冷蔵庫に食べ物などあるはずがない。

案の定、レイは顔を顰めて慌てて冷蔵庫のドアを閉めた。


「朝食も運んでもらえるように言っておこう。着替えはちゃんと持ってきたね?」

「待って、レイ!」


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