アジアン・プリンス
「いいや、よくない。私は君より先に妃を妊娠させなければならない。それが義務だからね。可能な限り妻を抱き、そのあとで君の許を訪れる。正統なプリンスが授かるまで、君とのセックスは充分に注意して……」

「もうやめてっ! お願い、もう、わかったから……やめて、レイ」


ティナは頭を抱え、首を振った。

レイの言うとおりだ。兄王の妃として残ると言いながら、心のどこかでレイと愛し合えることを期待していた。

この国に残れば、近くにさえいれば……。

だがそれは、どう考えても日陰の身でしかあり得ない。レイの訪れだけを待ち、彼が妻に与えた愛情のおこぼれを貰う日々。それが、平気な訳がない。1度抱かれたら諦められるだなんて、とんでもないことだ。

たったひと晩、濃密な夜を過ごしただけ、それも最後の一線を越えてはいない。

なのに……。

彼の妃となった女性は、当然のようにあの愛撫を毎晩独占する。夜だけではない。昼間は彼の隣に立ち、あの穏やかで気品高い笑顔すら独り占めするのだ。ふたりは人生を分かち合い、愛と命を育む。

そんな姿を目の当たりにすれば、ティナは気が狂ってしまうだろう。

愛する人を他の誰かと分け合える訳がない。もしふたりの間に子供でも授かれば、それこそ悲劇だ。


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