アジアン・プリンス
(38)空からの使者
あの日から1週間――。

ティナはひとり、アジュール島のコテージで過ごしている。


ふたりの写真が掲載されたデイリーニューズ紙は、確かに発売された。 

だが、その記事を世界中のマスコミは無視したのだ。そして翌日、デイリーニューズ紙の記者がとくだね欲しさにヤラセをしていたことが発覚……。

芸能人でもない島国の王室スキャンダルは、瞬く間に消え失せたのである。


ティナは、レイが見縊るなと言った意味を、よく理解したのだった。



あの日、もう少しだけふたりでいたい。特別なことは何もしなくていいから。そう言おうとしたティナの頭上に、1機のヘリが現れた。

パパラッチか? とにわかに緊張の走るティナに比べ、レイは落ち着いたものだった。それもそのはず……。


「見なさい。君も乗ったことのある王室ヘリだ」


言われてティナも気がついた。

機体の扉部分には、紺碧のアズウォルド国旗が描かれている。だが、それが意味することはひとつだ。


「サトウには私が連絡した」

「どうして? 彼から逃れるためにこんな場所に来たんじゃなかったの?」


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