アジアン・プリンス
レイは木の枝にかけておいたパーカーを羽織りながら、


「マスコミ対策だ。昨夜のうちに手を打つはずだった方法と、今からではやり方が違う。一刻も早く、私は宮殿に戻らねばならない。それに、私が理由も告げず連絡断てば、6時間後には警察が動き、12時間後には軍が動くことになっている」

そう答えると、レイは砂浜に着陸したヘリに近づいて行った。

中からサトウ親子が飛び出してくる。息子のニックのほうは表情を変え、慌てた様子だ。補佐官のサトウは……ティナの目にはいつも通りに見えた。


「殿下っ! ご無事でございましたか?」

「ああ、大事無い」


駆けてくるニックにレイはひと言だけ告げる。

その後から息子に追いついたサトウは、レイを責めるような眼差しで見つめ、呟いた。


「殿下。このようなことをなさるとは……信じられません」

「今から戻る。それ以上言うな」

「しかし」

「命令だ」


レイのひと言にサトウは「……御意」とだけ言い、後ろに下がった。


「いいかい、ティナ。君は私が良いと言うまでこのコテージに留まるんだ」

「私にも命令するの?」


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