アジアン・プリンス
「2週間後には、王宮内の礼拝堂で結婚式が行われると聞きました。その準備を殿下がご命令になった、と。私は殿下のいかなる選択にも従う所存です。ですが、神と良心に背くような行いだけは慎んでください。先の陛下のようなお振る舞いだけは……どうか」


まさに、真剣そのものの表情で訴えかける。


「言いたいことはそれだけか?」

「はい」

「明日の第1便で東京に向かう。警備はいつもどおりだ。しばらく忙しくなる。君の処分は2週間が過ぎてから伝える。今日は――家に帰り、頭を冷やせ。以上だ」

「……はい」



ミサキの口から恋人の名を聞きだすのに丸2日掛かった。

相手はマシュー・ウィルマー、28歳。なんとアズウォルド王室警護官で、ミサキの警護担当者だった。どうりで、出入国が自在なはずだ。彼らにも、外交官特権が与えられている。

家出娘は大使館に匿われていたと聞き、さすがのレイも驚きを隠せない。

マシューは逃げたりせず、レイの呼び出しにも素直に応じた。自分はどんな処罰も覚悟している。だが、ミサキと子供のことだけは、と頼まれ……。


その一方で、ミサキはなぜかマシューが死刑になると思い悩んでいた。

彼女は床に正座をして、日本人特有の土下座で、レイにマシューの助命を嘆願したのである。


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