アジアン・プリンス
「あんな写真どうってことないわ! あなたが言ったように、私には隠すものなんてないんだから! 私が言いたいのは、家族のために必死で働く少女を利用するのは間違っている、それだけよ!」


スザンナは青い顔をして、ことの成り行きを見ている。

逆にチカコは怒りのためか真っ赤だ。

これまで言い返されたことなどなかったのだろう。アサギ島のティナは、チカコの身分やレイに迷惑を掛けることを恐れ、借りてきた猫のようにおとなしかった。


「わ、わたくしを誰だかわかって言ってるのでしょうね? わたくしは」

「国王の母って言いたいんでしょう? だったら母親らしいことをしたらどうなの? 国王陛下を1番蔑ろにしているのはあなたよ!」


ティナは言いたいことが言えて、ようやく気分がすっきりした。「失礼しました」と短く付け足し、踵を返してセラドン宮殿に向かう。

だがその背中に、チカコは信じられない言葉をぶつけた。


「よくも、よくもわたくしを馬鹿にしたわね! 今日はレイから、お願いしたいことがある、と言われて王宮まで来たのだけれど……。こんな侮辱、絶対に許しませんから! 何を頼まれても、絶対に認めたりしません!」


ティナは冷水を掛けられた気分だった。

レイの足を引っ張ってしまったかもしれない。一瞬で彼女の心は後悔の色に染まる。


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