アジアン・プリンス
「男性の心を繋ぎとめるため、そういった手段を取る女性がいることは知っておりますが。ミサキさまがそんな方とは。――ああ、申し訳ありません」


スザンナは慌てて謝罪する。

ミサキがそういった女性ではなく、レイが誠実だというなら、ふたりは愛し合っているという結論に結びつく。


「いえ、いいのよ。それに、確かにアジュール島に匿っていただいたけれど、私と殿下はそんな関係じゃ」


「まあ! あんな写真が出回ったというのに、よくもそんな白々しいこと」


突然、背後から悪意の詰まった声を浴びせられ、ふたりの足は止まった。

振り返ったティナの目に映ったのは、アサギ島で散々ティナを罵った、チカコ・サイオンジだった。


ふいに、ティナの心に怒りが湧き上がってくる。


「その写真を撮らせたのはあなたじゃないの!?」

「あら、そんな話を誰に聞いたのかしら?」

「誰でもいいわ! あんな少女を使うなんて……最低よ」

「撮られて困るなら、あんな破廉恥な真似はしないことね。わたくしを責めるのはお門違いというものよ」


ちょうど王宮の裏手辺りだ。幸い人影もない。

ティナは基本的に、横暴を絵に描いたような父にすら言い返す人間だった。それに加えて、ティナはチカコに対して、レイが感じるような引け目は一切ない。


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