アジアン・プリンス
「レイ、ちょっと待って! あの……レイ? それってプロポーズに聞こえるわ」

「プロポーズ? 何を言ってるんだい、ティナ。プロポーズならアジュール島でしたじゃないか? 私は皇太子の名前に懸けて誓った『君の名誉を取り戻し、幸福な未来を約束する』と。君を兄の王妃にも、私の愛人にもしない。それに、傍にいなければ幸福にはできない。第一、そのつもりがなければ、君をあのコテージには連れて行かなかった」

「でも、あなたはミサキと破談になっても、日本人を妻にする、と言ったわ」

「そうだ。だから、そうしないために明日、日本に行くんだ。上手くいくように祈っていてくれ」


レイは目を閉じ、当たり前のことのように言う。


ティナは絶句していた。

もし、上手くいかなかったら……そう思うと涙が浮かぶ。幸せと不安がない交ぜになり、笑っていいのか泣いていいのかもよくわからない。

突然だ。あまりにもレイの告白は突然すぎて……。


「レイ……私、愛してるって言われてないわ」

「それも戻ってからだ。生涯を誓えないなら、愛の言葉は口にしない」

「誓えない可能性は何パーセント?」

「私の名前と同じだ」

「……え?」


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