アジアン・プリンス
アズウォルドが気に入られるもうひとつの理由。この国では米国ドルと日本円が普通に使用できるのだ。両替に手数料が掛からないのだから、楽なことこの上ない。

しかも……。


「私も、同じ物をいただける? カードしかないんだけど」

「OKOK! 全然問題ない」


どんな小さな店でも、コーラ1本からカードが使えるのも利点だ。

ゲート係員の女性より拙い英語で「付けてあげるよ」と言われ、右手首に30ドルのバングルを嵌めた。土台の部分は金メッキのようだ。


「これでプリンスとお揃いだ!」


店員に言われ、ティナは笑うつもりが、無意識のうちに泣いていた。


「ああ、大丈夫。ごめんなさい。レイ――プリンス・レイのことは好き?」

「もちろん、大好きさ! プリンスは強くてかしこい。アズウォルドの男はみんな彼を理想にしてる。プリンス・レイは国の誇りだ!」


店員は、最後には拳を突き上げ、大きな声で叫んだ。周囲から笑い声と共に拍手が上がる。


――この国の誇りを奪うわけにはいかない。


ティナは彼らと一緒に笑いながら……涙が止まらなかった。


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