アジアン・プリンス
「お嬢さん! お土産にいかが? プリンス・レイとお揃いですよ!」


ティナが出国ゲートを抜け、フェリーの待合所にポツンと立っていたとき、声をかけられた。

黒髪の観光客の中で、金髪の彼女はことさら目立つ。しかも、今にも泣きそうな顔のひとり旅の女性など、賑やかな観光地では珍しいはずだ。

“お揃いのバングル”はワゴンに並べてあった。

声を掛けた男性店員は、一見してポリネシアン系の顔立ちをしていた。黒い髪と威圧感を漂わせる立派な体格、それでいて怖く感じないのは、人懐こい表情と陽気な口調のせいだろう。

ワゴンには、ネックレスやペンダント、イヤリング、ブレスレット、アンクレット……そのほとんどにアズライトが付いていた。

その中でも1番多いのが……やはりバングルだ。


「全部……アズライトなの?」

「そうです。最高級よりは少し落ちるけどね」


約20ドルから30ドルの値札ばかりだ。偽物ではないのだろうが、一応アズライトと呼べる程度の物か。

ニューヨークの露店で売っているレベルだと考えればいいのかもしれない。それより少し高めなのは、やはり観光客狙いのせいだろう。

その証拠に、ティナの隣に立つ日本人女性が、店員の勧めるバングルを手に取り楽しそうに笑っている。新婚だろうか? 女性は背後に立つ日本人男性に笑いかけ、男性は日本円で相当額を支払って行った。


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