アジアン・プリンス
【新婚編】

(1)初めての夜

「待って、レイ……明日は戴冠式よ。それが終わって」

「終わって? 夜には王宮で晩餐会だ。明後日には本島でパレードが行われ、そのまま海上パレードとして全島を船で回る。次の日には即位記念式典、結婚祝賀会……ハネムーンに出かけられるのは1週間後だ」

「わかってるわ、でも」


ティナの反論はレイの唇により遮られた。

結婚式を終え、ふたりは本島に戻って来ている。そして、新婚初夜を過ごすべく、ティナはレイに横抱きにされ、セラドン宮殿に入ったところだった。


明日の戴冠式を終え、初めてレイは第16代アズウォルド国王として王宮に入ることになる。

同時にティナも皇太子妃から王妃となるのだ。ティナにすれば僅か1日だけの皇太子妃だった。
 

長い時間……初めて出会ってから2ヶ月も経ってはいないが。

それでもふたりにとっては2年にも等しい時間を待って、この日を迎えたのだ。

そしてティナは「アジュール島のコテージでハネムーンを過ごそう」というレイの言葉を信じ、その日を心待ちにしていた。

だが、実際にアジュール島で過ごせるのは1週間もない。

ハネムーンとして1ヶ月を取ってあるものの、約25日間はなんと海外8ヶ国を回るという。1ヶ国辺り3日なんて信じられないペースだ。

しかも、とてもハネムーンとは言い難い公務がびっしり組み込まれていた。


< 240 / 293 >

この作品をシェア

pagetop