アジアン・プリンス
だが、エリザベスの話はティナにとって不愉快極まりないものであった。


「レイが15歳で成人を迎えたのはご存知かしら?」

「海に出る儀式のことですね。それが何か?」

「この国では、成人を迎えた男性は女性と愛し合うことが許されるのよ。15歳だったけれど、レイは一人前の男だったわ」


フフフ、とエリザベスはいやらしい目つきでティナを見た。


「奥の寝室に大きなベッドがあるでしょう? レイはフサコ様の目を盗んでは、わたくしをこちらに連れて来てくれたの。もう、昔のことですものね。王妃様がそんな些細なことを気になさったりしませんわよね」

「ええ、そんな大昔のこと、全然気になりませんから!」


ティナはエリザベスを睨みつけて言い返す。

そんな強気の態度が面白くなかったのだろう。エリザベスはティナが最も気にしていることを話し始めた。


「では、これはご存知かしら? 12年前、わたくしたちは随分悔しい思いを致しました。何と言っても、国のためとはいえ、血の繋がったアーロンを全く無関係のアメリカ人男性の息子にしてしまったんですもの」


< 265 / 293 >

この作品をシェア

pagetop