アジアン・プリンス
「ティナ……」


気がつくと、レイがティナの傍に戻って来ていた。

だが、室内に残る強い芳香……シャネルのアリュールにティナは眉を顰めた。

エリザベスの香水はまるで彼女自身のように、レイやこのコテージに染み付いている。


「騒がせてすまない。だが、彼女は今日中にアメリカに帰り、そして2度とこの国に戻ることはない。だから」

「アーロンは? 彼は違うのね? あのアズル・ブルーの瞳を持ち、チョコレート色の髪をした少年は度々王宮を訪れるのね?」

「ティナ……落ち着いて私の話を聞きなさい」


レイは困ったような顔でティナを見ている。

だが、ティナは1度口にしたらもう止まらない。


「イヤッ、近づかないで! どうして結婚前に教えてくれなかったの? あんまりよ。あなたの家族は、私や私の産む子供たちだけじゃないんだわ。……ひょっとして、王室法を新しくしたのは、あの子に王位を譲りたいから? 私を妻にするためだなんて言って、本当は」


その瞬間、レイはティナの両腕を強い力で掴んだ。


「ティナ! それは私に対する侮辱だ! 訂正するんだ。さもなくば後悔することになるぞ」

「私も脅すの? 最低よ……」


ティナの声はレイの唇によって阻まれた。


< 270 / 293 >

この作品をシェア

pagetop