アジアン・プリンス
もし、アーロンに王子としての身分を与えるのなら、その親子関係を無効にすることから始めなくてはならない。

だが死後12年も経っていては、法律上、先々代ソウ国王の王子としては認められないのだ。


無論、どんな場合も特例は存在する。

しかし――。


「それでよく、エリザベス王女がアメリカに帰ることを納得したわね」


朝1番でレイの元に連絡があったのだ。エリザベスが帰国した、と。

だが、ティナにはそれが不思議だった。とても簡単に引き下がるような女性だとは思えない。


「エリザベスはアーロンが王子になれば、この国に戻って来るつもりだったらしい。だが、リュークがそれを拒否した」


当然、エリザベスは激怒してアーロンの存在を世間に公表すると言ったようだ。

アズル王室にとって、ソウ国王とエリザベス王女が不倫関係にあり、子供まで儲けていたことが明らかになれば、とんでもないスキャンダルだろう。

ただでさえ、ソウ国王は国民に嫌われている。エリザベスとアーロン親子が温かく迎えられるとは思い難い。

その反感が、エリザベスの父親リューク王子に向かうことも明らかだった。


それらを鑑みて、リューク王子は真実を公表するなら、自らの称号と王位継承権を放棄すると宣言した。


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