アジアン・プリンス
ハネムーン2日目。

レイは小型クルーザーを操縦しながら、入り江を滑らせるように走らせた。


以前、本島からアジュール島に渡ったときもレイの操縦だった。あのときは真夜中で、しかもレイとの関係は暗礁に乗り上げていて、楽しむ余裕などあるはずもなく……。

でも今日は違う。


クルーザーは外洋にでるには厳しいサイズだ。それでも5~6人程度なら充分に遊ぶことが可能だろう。1番奥にはダブルサイズのベッドが1台。簡易キッチンに小型の冷蔵庫。温水シャワーも完備している。


「え? アーロンは王子にはならないの?」


海面は静かで、潮風が心地良い。

デッキ上部に設置されたフライブリッジタイプの操舵席は、1番風を受けて走る部分だ。居住性より楽しく走らせるのが目的のクルーザーらしい。

レイの横に座り、ティナは髪を靡かせながら驚きの声を上げた。


「だって、レイやソーヤの弟ってことが科学的に証明されたんでしょう? なのに……」

「アズウォルドの法律は王室法だけではないんだよ、ティナ」

「じゃあ、法律が?」

「そうだ。我が国では死後3年以内、又は子か子の代理人がその死亡を知って1年以内でなければ、親子関係は認められないんだ」


大きな問題は、エリザベスの長男アーロンには戸籍上の父親が存在するという点だろう。


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