アジアン・プリンス
そうだ。つい、アメリカ東海岸側に住んでるため海といえば“アトランティック・オーシャン(大西洋)”を思い浮かべてしまったが、彼の場合は、“パシフィック・オーシャン(太平洋)”が海なのだ。

最早、自分の呆れた間違いに謝罪の言葉すらみつからない。


「ああ、いや……責めているわけではないのだ。私のほうこそ失礼した。――これはお詫びだ」


そう言うと、皇太子は腕のバングルを外し、ティナの右手首にカチッと嵌める。

どうやら、サイズは調整可能らしい。ピッタリとまではいかないが、それでも手首から落ちないサイズまで縮まった。


「え? ええっ! あの、でん、でん……」

「ああ、それから、殿下は止めてくれ。私の名前はレイだ。そう呼んでくれ、ティナ」

「そんなっ! プリンスの名前を呼び捨てなんて!」

「なら、ふたりでいるときだけでもいい」

「そ、そんなこと……それに、こんな大変なものを、私に嵌めていただいては」


右手首のバングルは、そこにあって当然のような印象を受ける。

だが、そんなはずはないのだ。確か“アズル王室の守護石”と言っていた。ティナは大きく首を横に振る。


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