アジアン・プリンス
「いいかい、ティナ、落ち着いて。アズライトは12の島すべてで取れる宝石だ。希少価値のあるものではない。君の給料でも充分買える金額なんだ」

「でも、大切なものじゃないんですか?」


ティナの問いにわずかだか、皇太子は言葉を選んでいるようだ。


「そうだな……大切にしていたのは事実だ。だから、私と同じように大切にしてくれる人に譲りたかった。私の瞳がこれと同じアズル・ブルーだと言ったとき、君の声は随分嬉しそうに聞こえた。私はこれを君に嵌めていて欲しい。受け取ってもらえないか?」


さっきとは逆で、今度は皇太子のほうがティナの手首を握り締めていた。

ティナの心臓はダンスを踊っている。

加えて、彼女の思考を狂わせる青い瞳で見つめられ……。


「それは……はい。それは、もちろん大切にさせていただきます、が……。あの、でん……いえ、プリンス・レイ。えっと、王妃の件は」

「ミス・クリスティーナ・メイソン。私は、バングルひとつで王妃を釣り上げようなどと考えてはいないよ」


彼は苦笑すると、悪戯っぽくウィンクしたのだった。


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