アジアン・プリンス
タブロイド紙のトップに屈託のない笑顔で映る異国のプリンスに怒りを覚え、ティナは数枚を一気に引き裂いた!

破き始めると止まらない。

部屋中に音を響かせながら、ビリビリになるまで破き続ける。決して涙は流してはいない。泣いても何も解決しないことを知っているからだ。

しかし、その目は血走っており、ノックをしても返事がないので扉を開けたメイドが逆に泣きそうになっている。


「お、お嬢様……クリスティーナ様。よろしいでしょうか? 旦那様が、お呼びですが」


手にした新聞の残骸を放り出すと、目を瞑って深呼吸した。


「判ったわ。すぐに行きます」

「あの……」

「ごめんなさいね。少し……そう、不安になってしまったの。お父様たちには内緒で、片付けておいてくれるかしら?」

「はい。かしこまりました」


決して普段のティナは短気でも神経質でもない。むしろ、使用人には優しいほうだ。

それが判っているので、メイドもすぐに笑顔で答えたのであった。


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