アジアン・プリンス
その大事な品がこの手にあると知れたらどうなるのだろう……。

背筋に冷たい汗が伝った。

レイはいったい、何を考えてこんなことをしたのだろう?


「王族のみがって言われたけれど、普通に売ってますよね? 買ってはいけない、ということ? それとも、身に付けたらいけないのかしら?」 

「ああ、いえ、それはアズウォルド人だけでございます。外国の方にはなんの制約もございません。どうぞ、気に入った石を見つけられましたら、ぜひ、お買い求め下さいませ」


罰せられることはなさそうだ。

一瞬、王妃になれば処罰されない、という理由で押し切られるのかと考えてしまったが……レイがそんな卑怯な真似をするはずがない。

だが、これはあまり人前には出さない方が無難な気がする。少し暑いが、ティナは長袖で過ごすことに決めた。

外せば済むことだが……自分の手にはめた時の彼の顔が過ぎり、どうしてもできなかった。


「あっ……えっと、皇太子殿下はこの王宮に?」

「執務室はございますが、王宮にお住まいになるのは国王ご一家だけでございます。皇太子さまはあちらに見えます、離宮……セラドン宮殿に住まわれておいでですよ」


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