アジアン・プリンス
国の未来を憂いての行動とはいえ……。

当時の王宮は老朽化しており、それが更に被害を大きくし、多くの罪なき者の命を奪う。


レイの父であるソウ国王は、在位わずか4年。57歳の若さで亡くなった。即死と言われている。

彼らが“魔女”と呼んだチカコはその魔力を発揮したのか、当日体調を崩し、アサギ島に残ったままで事なきを得た。

代わりに、王を訪ねた現国王であるシン王子夫妻が巻き込まれた。

シン王子は重傷、結婚2年目になるケイコ妃は死亡……彼女のお腹にいた小さなプリンセスも助からなかった。

警備担当者や政務官、その他関係者を合わせると、9名が死亡、22名が重軽傷を負うという大惨事になったのである。


父は即位後すぐ、チカコのためにも長男シン王子を皇太子にしようとした。

だが、議会はレイ王子を皇太子に推薦したのだ。そのため、4年間、後継者の席が空いたまま……国王崩御となってしまう。

国政は混乱をきたし、このままではまた、大国の内政干渉を受けることになる。


本来ここで立ち上がらねばならないのが、当時28歳のシン王子だ。

だが彼は、自身も頭蓋骨骨折、脊椎損傷という大怪我を負い、加えて、妻子を失ったショックで、回復すら危ぶまれていた。


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