アジアン・プリンス
一方、国も夫も子供も無視して、プリンセスの称号で欧州の王室を渡り歩いていたルビー王妃だったが……。

さすがに、称号を奪われそうになり反撃に出た。ルビー王妃はチカコに国外退去を求める裁判を起こすなど、まさにアズウォルドは王室を舞台に修羅場と化していく。


だが――その事態は最悪の形で終止符を打たれたのだ。


1997年4月23日。

当時レイはイギリス・バークシャー州のイートンカレッジ最終学年に在籍していた。

友人らと、ペルーの日本大使館立てこもり事件が解決して良かったと話していた時、母国で爆弾テロがあり“国王崩御”の速報が流れた。


犯人はアメリカ系アズウォルド人、大学生4人の犯行。

レイの父は国民の不満に耳を傾けず、国内で起こるテロの可能性などまるで認識していなかった。犯人らは、警備のシステムも人数も十分でない王宮に、手製の時限発火式爆弾を仕掛けたのだ。


彼らの犯行声明は、


『王妃を蔑ろにし、愛人を王宮に連れ込む国王を排除する。レイ王子こそが真の国王である。彼からプリンスの称号を奪おうとする魔女に神の制裁を』


というものであった。


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