アジアン・プリンス
フサコ王妃は、両親に蔑ろにされるレイをことのほか可愛がった。夫亡き後、晩年はこの離宮で暮らし、レイも国内に戻ったときは必ずここに寝泊りしていたという。

このバングルも、フサコ王妃が名人と言われる職人に注文し、特別に作らせたものだ。レイの15歳の成年式に贈った品だった。


ちなみに、この国では男子のみ15歳から成人の儀式を行う。

それは、本人が生まれ育った島から隣の島へ泳いで渡るというもの。一気に泳ぎ切らねばならず、昔はこの儀式を無事に終えられたら大人と認められ、漁に出られるようになったという。

漁に出てはじめて家族を養う資格が得られ――それは同時に、嫁取りも許されるということを意味した。 

現代では形式だけで、イベントの一環として行われている。15~20歳までの間に1度参加すればよく、途中リタイヤしても結婚できないといったことにはならない。


だが、王族にとっては形式だけとは言い難い。

人心を惹き付けることにおいて、非常に意味深いものとなる。


レイはこの儀式に15歳の時に参加した。本島から隣のアジュール島まで約20キロを見事泳ぎ切る。

異母兄の現国王が20歳で参加した時は、数百メートル泳いだのみだったというから……どちらが国民の心を虜にしたかは、言うまでもないことだった。


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