アジアン・プリンス
(17)全裸のプリンス!?
ティナが様々な考えを巡らせていた時――テラスに降りる大きな窓越しに、車のヘッドライトが見えた。

セラドン離宮は王宮の敷地内にある。国賓用のスイートからも見えたなだらかな坂道を、車がゆっくりと進んでくる。ここを目指していることは間違いないようだ。

ティナは立ち上がると離宮の玄関に向かった。


深夜の静寂を壊さぬように、車はそっと玄関前に停まる。

玄関脇のガラス越しに運転席から降りる人影が……そのまま反対側に回りこみ、その人物は後部座席のドアを開けた。おそらくは運転手だろう。

後部座席から降り立ったのはひとりだけ。

そして、運転手を労う小さな声が聞こえる。――レイに間違いない。

他には誰の声も聞こえず、人影も見えない。どうやら、事務官や警護官は門前で降ろして来たようだ。

ティナはドキドキして、その玄関ドアが開くのを待ちわびた。


しかし、待てど暮らせど、誰も入ってこない。


「どうして? いったい、どうなってるの?」


自分から出て行きドアを開けるべきかどうか、ティナが試案していると、レイは裏庭のほうに回ってしまった。


「え? ヤダ……嘘」


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