アジアン・プリンス
「な、なんだ! その格好は!!」


メイソンの怒りも当然だろう。こんな姿で出迎え、万一にもプリンスのご不興を買っては目も当てられない。


「あら、慎み深いドレスだと思いますけど。それとも、胸がこぼれそうな、腰までスリットの入ったチャイナドレスのほうが、アジアンプリンスのお好みかしら?」

「レイ皇太子殿下はアズウォルドの次期国王だ! チャイナドレスもキモノも要らん! さっさと着替えて来るんだ!」


一家の当主であるメイソンの怒りに、周囲はおろおろしている。その場には、メイソンの長男でティナの兄、ジャックもいたが、彼も父には逆らえない正確だった。

ティナは腕を組みその場に立ったまま動こうとしない。

業を煮やしたメイソンは娘の腕を掴み、強引に階段を上がろうとした、その時だ。


「社長! 皇太子殿下のご到着です!」


その声に全員が振り返り、動きを止めた。


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