アジアン・プリンス
(19)アサギ島へ
アサギ島、漢字で浅葱島の名前も付いている。

本島から西へ約150キロ、アズウォルドで1番日本に近い島だ。この島に、シン国王が静養する仮王宮スマルト宮殿が建っていた。

宮殿は別名「花紺青(はなこんじょう)館」と言われ、純日本風の宮殿だった。

亡き父王が別れた妻のため、15年前に500万ドルもの費用を投じて建築した。当時、国民から大パッシングを受け、テロへの引き金にもなったと言われた、曰くつきの宮殿である。


あの夜、レイがゲストルームを訪れることはなかった。

結局、ティナは朝方まで眠り損ね……慌てて起き出した時には9時を回っていた。そのときすでに、セラドン宮殿のスタッフは忙しく働いており、レイも公務に向かったあとだったのだ。


(どうしてあんなことを言ってしまったの?)


朝まで不適切な状態が続いたとは思えない。それはティナがふられたということだ。そのことを考え、ティナは後悔ばかりが募った。兄王の妃にと連れて来た女が、弟をベッドに誘ったのだ。高潔な彼には許せないことだろう。


だが、元はと言えば、ラインを踏み越えたのはレイのほうが先なのだが……。


悩みを抱えたまま、ティナはトボトボと王宮に戻る。


(わたしはいつ、アメリカに送り返されるの?)


そればかり考えながら。


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